FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

達磨 



起きてみると、正月らしい。
正月らしいとは、随分、呑気な言いようであるが、ここのところの不規則な生活のせいか、日付がぼやっとしている。

何日か前に、そろそろ晦日も近づいてというニュースを聞いていた。
また、昨夜、夢うつつに除夜の鐘を聞いたような気もする。
ともかく、新聞だ。
新聞を取りに、郵便受けへ行くと、数枚の賀状が一緒に入っていた。
付き合いはそう多くはない。
それでも、筆まめな奴が幾人いて、こうやって義理堅く、賀状の一枚も送ってくれるのだ。

新聞を一通り読み、賀状に目を通すと、腹が空いていることに気が付いた。
一人暮らしでは、お節にも雑煮にも縁は無い。
どこか、店が開いていると良いのだか。
とにかく、出かけてみることにしよう。



私は着物に着替えると、玄関で下駄を履き、街中へと出て行った。
住んでいるところが、わりあい賑やかなところなので、数分歩くと蕎麦屋がある。
店を覗くと開いていた。
店に入り、てんぷら蕎麦を注文し、ふと、昨日は晦日だったではないかと思い、こんな軽口を店員に叩いた。
「昨日の今日の店開けじゃあ、休む間も無いだろうに。」
店員は茶を持ってきながら、へい、昨日はおかげ様で大賑わいで…今日は、近くの神社に初詣のお客様が多いもんですから…などとにこにこ顔で喋っている。
そうか、近くに神社があったかと、普段、無信心な私は思った。
初詣くらい行ってみよう、そのとき何気なくそう思った、それがこの話の発端となる。



神社の石段を下っていくと、ここは面白い神社で本堂が底にある、時間が遅いせいかもしれぬが、行きかう人は少なかった。
五人連れの家族と四人連れの家族が、わいのわいのと石段を登って行ってしまうと、自分一人である。

正月だというのに、屋台も出ていない。
なんとうらぶれた神社なのだろう、でも、この方が静かでよい、そう思いながら、お賽銭を上げ、柏手を打って、一年の安泰を祈った。
さて、帰ろうと石段を上りかけると、旦那、旦那と呼びかける声がする。
声の方を見ると、達摩売りが筵をひいて達摩を並べていた。
「旦那。縁起もんだから、お一つどうですか。」
達摩売りは片目が無いらしく、開いている方の目で私をじっと見つめながら、売り口上を言っている。
「旦那、達摩だよ。七転び八起きだよ。縁起もんだよ。正月の一日に是非、お買いなさい。」
「何しろ、七転び八起きだよ。七回転んでも八回起きるんだよ。こんなに縁起の良いもんは無いよ。さあ、さあ、正月の一日にお一つ、お求めな。」
私は、筵に近づき、小さい達摩を手に取った。
何のことは無い。ただのはりぼてである。無信心な私には用が無い。
私は黙ったまま、達摩を筵の上に戻してから、こう言った。
「私は独りもんだし、願をかけることもとくには無い。おまけに私の小さな家にこんなに派手な置物は似合わない。誰か別の人と良いご縁を持った方が達摩も仕合せだろう。」
達摩売りは、開いている方の目で私をじっと見ながら、食い下がった。
「正月の一日早々に、そんな野暮なことを言うもんじゃないよ、旦那。七転び八起きだって。今は独りもんかもしれないが、いつ何時どんなご縁があるか分らない。そうなってみなよ。かかあの面倒を見て、餓鬼の面倒を旦那が見るんだよ。願の一つもかけたくなることが、きっと起こらあな。そんときによ、赤い達摩さんが旦那に元気をくれるってもんだよ。何しろ七転び八起きの縁起もんだからさ。最後にゃあ、必ず笑うってわけさ。旦那と出会ったのも何かの縁だよ。ほら、旦那、このでっかい達摩を見ておくれ。今日、十ほど運んできたのが、今は一つさ。九個売れったってことはさ、苦はよそ様が、持って行ってくれたわけさ。残りもんには福があるって、昔から言うじゃないか。七転び八起きだよ。本当に勉強させてもらうからさ、この一番大きい達摩を買っておいきよ。」
大玉西瓜ほどもありそうな達摩を押し付けられて、私は面食らった。しかし、反面、愉快でもあった。
しけた神社で買ったどでかい達摩がしけた自分の家にあること、そのことを想像すると自虐的に愉快でもあった。
中身が空っぽの張りぼてが、しけた我が家に鎮座しなすって、この達摩屋の親爺みたいに、片目で俺を睨んでいる。
私は魔に魅入られたかのように、達摩を買った。
七転び八起きか、と思いながら、達摩を買った。








今回の散文は長いので、何日かに分けて掲載させていただきます。

件の弟が小さい頃の話。
お刺身は嫌いでしたが、すし飯は大好き。
寿司屋のカウンターで、僕、何がを握ろうか?と問いかけられると必ず、
「ご飯だけ」と言っておりました。
回転寿司では無理ですねぇ(ーー;)

ここまで読んでくださってありがとうございましたm(__)m
どこか良いところがありましたら、下のアヒルさんとブログ村のバナーをクリックしてやってください。


にほんブログ村 ポエムブログ 現代詩へ
にほんブログ村 

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

こんばんは

suffii姐さん、こんばんは!

とても趣があって、スラスラ読める散文でした。
達磨売りのセリフが見事ですね。
suffiiさんは、いい売り子さんになれますよ。
でも今は達磨もamazonで買うのでしょうか?(笑)
続き楽しみにしています。

私もお寿司は大好きですが、寿司飯だけでは
寂しいですね(笑)

No title

こんばんは。・・・九個売れったってことはさ、苦はよそ様が、持って行ってくれたわけさ。・・・ずいぶんと洒落たことおっしゃる商売人さんですね^^

まだイントロダクションとのこと、続きが楽しみです!

HIZAKI

Re: こんばんは

オジサマ、こんにちは。

オジサマは人を見ぬく目があるようですね(笑)
営業事務をしていたころ、上司から営業に移れ移れとうるさく言われたことがありますw

寿司飯だけの弟は、ざる蕎麦を麺つゆにつけずに、麺だけで食べます。
一風変わった奴なんです(^_^;)

コメントありがとうございました。

suffii

Re: No title

HIZAKIさん、こんにちは。

はい、洒落たことを言う商人は怖いんですよ(笑)

全部で4回くらいに分けるつもりなので、続きもよろしくお願いいたします<m(__)m>

コメントありがとうございました。
suffii
プロフィール

suffii

Author:suffii
文学少女でした。
現在は本を読むより、音楽を聴くほうが多いです。
好きなのはロック。
昨年よりボイストレーニングとエレキギターの練習を始めました。
気ままに書く詩や日常の忘備録です。

趣味ですが、文字に触れること、音に触れること以外に着物を着ることが大好きです。
伝統にのっとりきちんと着ることも好きですが、着崩す面白さにも最近、目覚めました。
着物にハイヒールでエレキ弾きます。


お時間があったら、覗いてみてください。

そんな奇特な方はいらっしゃらないとは思いますが、無断転載はご遠慮ください。

それから、できれば拍手をよろしくお願いします。
超初心者ですが、訪問してくださる方がいること、
とても励みになっています。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カウンター
ブロとも一覧

7.143

DECA ナル絵

ライライ2

HMOの気ままな日常

よっくんうちゅうのたび

展示中。自作ラノベ&詩!!

Rhodesian diary (マークのポンコツ写真館)

LongGoodbye

また 吐いちゃった

ターボの○○な日々

~『けんたろう』のマイブログ~
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
小説・文学
4966位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]

413位
アクセスランキングを見る>>
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。